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決算期変更を検討する前に知っておくべき基本と手続き|担当者が押さえるべき全体像を解説

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公開日:2024.12.04
最終更新日:2025.04.18
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企業の成長や経営戦略に合わせて、決算期を見直すことは有効な手段です。しかし、決算期変更には、定款の変更や税務申告などの手続が必要であり、慎重な計画と準備が求められます。事前に変更のプロセスや必要な対応を理解しておけば、業務の混乱を避け、スムーズに進めることが可能です。

本記事では、決算期変更を検討する際に知っておくべき基本と具体的な手続について解説し、変更に伴う業務負担の軽減方法や注意点も紹介します。担当者が理解しておくべき重要なポイントを把握して、万全な状態で決算期変更に臨みましょう。

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決算期変更とは?まずは全体像を押さえよう!

決算期変更とは、会社が定款で定めた事業年度の最終日(=決算日)を別の日に変更することです。通常、会社は設立時に決算期を定めますが、事業運営の状況に応じて、その時期を見直す必要が生じる場合があります。

決算期の変更を行う際には、定款の修正や税務署への届出など、一定の手続が求められます。変更後の初年度は通常よりも業務が増える可能性があるため、計画的な対応が重要です。

決算期変更を検討すべきケース

会社の経営状況や外部環境の変化により、決算期の変更が必要となる場合があります。決算期の変更は業務フローや税務申告などにも影響を与えるため慎重な判断が必要です。

以下に、決算期変更を検討すべき典型的なケースを紹介します。どのような状況において決算期の見直しが有益であるのかを理解しましょう。

ケース 1: 取引先や親会社の決算期に合わせたい企業

取引先やグループ会社と決算期を合わせることで、業務効率化が図れることがあります。特に親会社と決算期が異なると、連結決算の際にデータの集約や調整が必要になり、手間や時間に伴いコストが増加します。このような問題を解消するために、親会社の決算期に合わせるケースがあります。

さらに、大規模な取引先と決算期を一致させることにより、営業活動や契約更新の時期がわかりやすくなり、ビジネスの安定化にも寄与します。取引先の決算期を意識した営業活動がしやすくなり、特に年度末に大口の取引が見込まれる場合、決算期を揃えることで安定した受注が期待できます。

ケース 2: 繁忙期・閑散期の影響を受けやすい製造業やサービス業

製造業やサービス業など、繁忙期と閑散期の差が大きい業種では、決算期が事業の繁忙期と重なることで、経理や会計業務が負担になることがあります。繁忙期には通常業務が増えるため、決算業務が遅延するリスクが高まり、結果として決算の精度が低下する可能性があります。また、繁忙期に決算のための棚卸しや在庫管理を行うと、ミスが発生しやすくなり、業務効率が悪化することも考えられます。

決算期を閑散期に合わせる形で変更することにより、経理担当者の負担を軽減し、決算作業の質を向上させることが可能です。経理業務の効率化により、決算報告のスピードも向上し、迅速な経営判断ができます。

ケース3: 監査法人と監査契約を締結するために決算期を調整する企業

上場を目指す企業が監査契約を締結するために決算期を変更するケースがあります。国内には3月決算の企業が多いため(※1)、監査法人は3月、6月、9月、12月決算のタイミングに繁忙期を迎えます。そのため、これらの月を決算期としている企業との新規監査契約に、監査法人が対応できない場合があります。

監査契約を締結できない場合、企業の上場が遠のく恐れがあります。そのため上場を目指す企業が決算期を4月や5月、11月などに変更するケースがあります。

※1 出典:国税庁「決算期月別法人数

決算期変更前に確認すべき2つのポイント:経営戦略、税務上の注意点

決算期の変更は、企業の経営に大きな影響を与える重要な決定です。変更によって業務プロセスの見直しや税務対応が必要になるため、慎重な検討が欠かせません。ここでは、決算期変更を検討する際に特に注意すべき「経営戦略」と「税務上の注意点」について解説します。

決算期の変更は、単なる会社法や会計上の手続だけではなく、企業全体の経営戦略とも深く関わっています。例えば、グループ全体での資金計画やプロジェクトの進捗、営業活動のタイミングなど、企業の活動全般に影響を与えるため、決算期変更のタイミングを見誤ると、経営にとって予想外の負担が生じる可能性があります。

また、事業の繁忙期や製品のリリースサイクルを考慮せずに決算期を設定してしまうと、決算業務と日常業務が重なり、業務効率低下のリスクもあります。そのため、決算期の変更前には、事業戦略や中長期の計画と決算期のタイミングが整合しているかを確認し、適切な時期を選ぶことが重要です。特に、決算期変更による資金繰りの変動を考慮し、必要な資金が確保できるかどうかの確認も欠かせません。

もし、経営戦略の中で期末の決算業務が大きな負担となっている場合、閑散期や余裕のある時期に決算を迎えられるよう、決算期の調整を検討するとよいでしょう。こうした調整は、決算作業の精度向上にもつながります。

決算期を変更する際には、税務対応についても十分に理解しておく必要があります。特に、税務署への異動届出書の提出や、変更後の初年度の税務申告がどのように扱われるかについては、事前確認が重要です。税務上、事業年度が1年を超えることは原則として認められないため、変更後の初年度は短縮決算となるケースが多く、通常の年度よりも早く申告・納税の対応が求められます。

また、消費税や法人税の課税対象となる期間も決算期変更によって変わるため、注意が必要です。例えば、減価償却資産の償却限度額や、消費税の基準期間の計算が変更されることもあり、誤った計算をしてしまうと税務リスクが発生する可能性があります。さらに、中間申告の要件に変更が生じることもあり、正確な理解と事前準備が必要です。

特に、短期間での決算作業を行う場合、通常の1年よりも期間が短いにもかかわらず、同様の決算処理が必要となるため、経理担当者への負担が増加する可能性があります。こうした点を考慮し、必要であれば外部の税理士や経理代行サービスの活用を検討することで、スムーズな決算期変更が実現できます。

決算期変更の具体的な手続き

決算期を変更する際には、法律に基づいた手続が必要です。変更をスムーズに進めるためには、定款の修正や関係機関への届出などの事前準備が重要になります。ここでは、決算期変更を進めるための具体的なステップを紹介します。それぞれの手順をしっかりと理解し、適切に対応することで、変更後の混乱を防ぎ、スムーズな業務運営を実現しましょう。

STEP 1: 株主総会で特別決議を取得し、定款を変更

多くの場合、会社の事業年度は定款に記載されているため、決算期を変更するためには、定款の変更が必要となり、株主総会で特別決議を取得する必要があります。定款を変更する際には、発行済株式総数の過半数を有する株主が出席し、そのうち3分の2以上の賛成を得ることで、特別決議が成立します。この手続は会社法で定められており、決算期の変更に限らず、重要な経営事項を決定する際に必要です。

株主総会の議案として、決算期の変更理由や新しい事業年度の開始と終了の日付を明確に記載し、株主に対して説明を行います。小規模な企業では、株主総会の開催が難しい場合、書面決議で対応するケースもありますが、いずれにしても記録を残すことが必要です。

特別決議の成立により定款が変更され、記載内容が修正されます。仮に定款に事業年度が明記されていない場合でも、株主総会での決議内容をもとに、正式な株主総会議事録の作成が必要となります。この議事録は後の届出手続に使用されるため、誤りのないように作成しましょう。なお、定款の変更に公証役場での認証は不要なため、費用の面でも比較的負担が軽いと言えます。

次のステップに進みます。

STEP 2: 届出書類の準備と提出

定款の変更が完了したら、次に行うのは所轄の税務署、都道府県税事務所、市区町村などへの届出です。決算期変更の実施を「異動届出書」として報告する必要があり、これに加えて「株主総会議事録」のコピーも添付して提出します。この手続が完了すれば、正式に決算期変更が認められることになります。

各提出先で必要な書類や提出期限が異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。また、許認可が必要な事業を行っている場合や、特定の行政機関との関わりが深い企業は、それらの機関にも追加で届出が必要になることがあります。事業の特性に合わせた手続を行いましょう。

STEP 3: 主要取引先や金融機関への通知

決算期の変更は社内だけでなく、外部の関係者にも影響を与える可能性があります。そのため、主要な取引先や金融機関には、決算期を変更したことを事前に通知しておくことが大切です。特に、決算報告書や財務情報を提供する必要がある場合、変更後のスケジュールを早めに伝えることで、取引先の対応もスムーズになります。

決算期変更によって、決算報告書の提出時期がずれ込むことがあるため、これらの連絡を怠ると、信用問題に発展するリスクもあります。取引先や金融機関に対する配慮をしっかりと行い、透明性のある対応を心がけましょう。必要に応じて、文書やメールでの正式な通知を行い、記録に残しておくこともおすすめです。

決算期変更に伴う業務負担

決算期変更に際しては、法的な手続のほかにもさまざまな業務が発生します。以下では、決算期変更に伴って発生する業務負担について説明します。

手続きの煩雑さと社内業務への負担が増える

決算期を変更する際には、法的な手続がいくつも存在し、それが社内業務に大きな影響を及ぼします。株主総会の開催にあたっては、議案の準備や株主への説明、会場の設営など、多くの準備作業が必要であり、特に株主数が多い企業では、円滑に進めるための工夫が必要です。

また、定款の変更が必要になるため、これに伴う書類の作成や、税務署などへの異動届出書の提出が求められます。これらの手続が完了するまで、社内の経理・財務部門の担当者は多くの時間を充てなければなりません。さらに、決算期変更後の初年度は、通常の決算業務とは異なる短縮決算や調整決算が必要になることが多く、業務量が急増する可能性があります。

こうした手続は煩雑であり、通常の業務に加えて進めなければならないため、現場の担当者にとっては大きな負担です。場合によっては、手続が滞ることで、決算期の変更が計画どおりに進まないリスクもあるため、外部の専門家や業務代行サービスの利用も検討しましょう。

財務データの比較が損なわれる

決算期の変更に伴うもう1つの大きな業務負担は、財務データの比較が難しくなることです。通常、会社の経営状況を把握するためには、過去の決算データを年度ごとに比較し、売上や利益の推移、コスト構造の変化を分析します。しかし、決算期を変更すると、前年度までのデータと直接比較できないケースが生じ、財務分析が困難になる場合があります。

例えば、変更後の初年度が5カ月や7カ月などの短縮決算になる場合、前年の12カ月分のデータと単純に比較することはできません。そのため、経営陣や投資家に対する業績説明においても、調整が必要となり、データの見せ方に工夫が求められます。

特に、決算期変更が初めての場合、過去のデータとの連続性が失われてしまい、経営判断を誤るリスクも生じます。また、外部関係者への報告や、銀行などからの信用調査でも、こうした調整が必要なため、財務資料の作成には通常以上の手間がかかります。場合によっては、システムの設定変更や、新たな帳票フォーマットの作成が必要になることもあり、これが現場に大きな業務負担をもたらします。

税務計算の調整が必要になる

決算期を変更すると、税務計算にも大きな影響を与えることになります。短縮決算となる場合、法人税や消費税の計算方法が通常と異なり、特別な対応が求められるため、税務処理が複雑化することが避けられません。

例えば、減価償却資産の償却限度額も、事業年度の期間に応じて調整しなければならず、これが計算ミスの原因となるリスクもあります。さらに、消費税の基準期間が変わることによって、消費税の課税適用や中間申告のタイミングも変更されることがあり、これを正しく処理するための時間と労力が必要です。

税務上の対応を誤ると、追徴課税や重加算税といったペナルティの対象となる可能性があるため、決算期変更に伴う税務対応については、事前に税理士と綿密に相談しておくことが求められます。また、決算期変更後の初年度においては、税務署への届出書類の提出期限が通常の年度よりも早まる場合があるため、これも注意が必要です。

決算期変更をスムーズに進めるための3つの注意点

決算期変更は、経営戦略上のメリットを得るために有効な手段ですが、その過程には多くの手続や調整が必要です。適切な計画と準備を怠ると、変更の効果が得られないばかりか、業務の混乱や予期せぬトラブルを招く可能性があります。

ここでは、決算期変更をスムーズに進めるための3つの重要な注意点を紹介します。これらを把握して、計画的かつ確実な対応を心がけましょう。

注意点 1: 変更前後の決算業務スケジュールを調整する

決算期を変更する際には、変更前後の業務スケジュールを綿密に調整することが重要です。

例えば、変更前の決算期が3月末で、新しい決算期を9月末に変更する場合、変更初年度は4月から9月までの6カ月間となり、通常の1年決算と異なる短縮決算になります。これに伴って作業負荷が増大することも予想されます。さらに、新しい決算期に適応するためには、月次・四半期の業務プロセスやスケジュールを見直し、早期に準備を進めることが重要です。

また、監査法人とのスケジュール調整も忘れずに行いましょう。新しい決算期に合わせて監査のタイミングを調整し、必要な書類や資料の提出期限を把握し、事前に準備を整えておくことで、業務の遅延やトラブル防止につながります。これにより、決算期変更の影響を最小限に抑え、円滑な業務進行を実現することができます。

注意点 2: 社内での合意形成と連絡体制を整える

決算期変更は、経理・財務部門だけでなく、営業や人事、ITなど他の部門にも影響を与える可能性があります。そのため、変更を円滑に進めるためには、社内での合意形成が欠かせません。変更の理由や必要性を明確に説明し、全社的な理解を得ることで、各部門の協力を得やすくなります。

例えば、営業部門では決算期に合わせた売上の締めや予算管理が変わるため、新しい決算期に対応したスケジュールや目標設定を行う必要があります。また、人事部門では、決算に関連する賞与や役員報酬の計算タイミングが変わることがあるため、事前に調整を行っておくことが重要です。これらの調整が不十分だと、各部門の業務が滞り、全体の業務効率に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、社内の連絡体制を整備し、各部門間の連携を強化することも重要です。決算期変更に伴う業務変更や新しい手続について、全社員に周知し、質問や相談があれば迅速に対応できるような体制を作りましょう。特に、会計システムや業務フローが変更される場合には、担当者だけでなく、システム利用者全員が新しい仕様を理解していることが必要です。このように、社内の理解と協力を得ながら進めることで、決算期変更の成功率を高めることができます。

注意点 3: 税務リスクを最小限にするため、税理士と相談する

決算期の変更には、税務面でのリスクが伴います。事業年度が短縮されると、通常の年度と異なる税務計算が必要となり、これに伴う税務申告の対応も変わってきます。特に、法人税や消費税の申告では、期間短縮に伴う特別な計算が求められる場合があるため、税務リスクを最小限に抑えるために、変更前に税理士と十分に相談しておくことが大切です。

決算期の変更に伴い、中間申告のタイミングや消費税の支払い時期も変わるため、これらの変更に対応するための税務計画を事前に立てておくことが必要です。さらに、変更後の新しい決算期における税務申告の準備も怠ってはいけません。申告期限の前倒しが発生する場合もあるため、必要な書類やデータの整理を早めに進めておくことで、申告時に慌てることなく対応できます。

税務に関する専門知識を持った税理士と相談しながら進めることで、複雑な税務計算も安心して任せることができ、結果として経理担当者の業務負担を軽減することにもつながります。

まとめ

決算期変更は、経営戦略上の有効な手段ですが、多くの手続と業務負担を伴います。成功させるには、株主総会での特別決議、定款の変更、税務署への届出などを計画的に進めることが重要です。また、社内の合意形成や税務リスクの管理も必要です。事前にポイントを押さえ、専門家のサポートを活用することで、スムーズな変更を実現しましょう。


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